「No.404」①

CoCシナリオ「No.404」の前日譚(になる予定)の小説進捗です。
猫猫(まおまお)と蘭玲(らんれい)初お披露目なのでは……?

 記録──××××年×月×日 東京都内 
 世界は突然崩れた。
 空にヒビが入り、それだったものは卵の殻のようにピキピキと音を立てながらあっけなく割れていく。そして大きな破片は人々の喧騒へと降り注ぎ、青い空は星一つ見えない闇へと変わっていった。
 人は、とんでもない出来事が目の前で起こると案外慌てないようで、逃げ惑う人よりも、ただ崩れたとしか言えないような奇妙な光景を見つめている人の方が明らかに多かった。それは流星群が見える日の光景によく似ている。
「あ、」
 誰かの声が漏れた。
 大きな爆発音が鳴る。
 そして──人類は少しだけ減った。
 空が崩れて降ってきたというのに、だ。
 どう考えても被害は大きいと誰しもが思っていたのだが、想像以上に「崩れた事による被害」は少なかった。しかしその代わりと言わんばかりに、謎の現象だけが残ってしまった。それが──

「猫(まお)、またそれ読んでんの? 面白い?」
 路地裏でしゃがみ込みながら本を読む男を頭上から覗き込むようにして、メイド服の少女は黒髪のツインテールを揺らしながら、そう言った。
「んー、まぁ読みやすいからね。蘭玲(らんれい)も読む?」
「『侵蝕』の話でしょ? あたしは別にいい」
 だって薬はもうあるんだし、気にしてもしょうがないでしょ。と言いながら、蘭玲はそのまま隣へしゃがみ込む。
『侵蝕』──それが、天災と呼ばれている世界が崩壊した現象による後遺症だった。発症要因は不明。突然、体の一部がゲームのバグのように崩れていき、感覚は失われ、しまいには存在ごと消える。誰がいつ発症してもおかしくないと言われているものだ。
「本当に、そうなのかな」
「ん? 何か言った?」
「いや、なんでもないよ」

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